2020/08/20
この記事では、仕事で求められるコミュニケーション能力について考察する。
企業が求める人材として「コミュニケーション能力が高い人」というのがある。とは言え、「コミュニケーション能力」という言葉は曖昧であり、実際にどんなことができる能力なのかわかりづらい。
この記事において、コミュニケーション能力は相手のことをただひたすら深く知ろうとする姿勢と定義する。これは、『仕事に必要な「本当のコミュニケーション能力』はどう身につければいいのか?』という本で安達裕哉さんが定義付けたものである。
この本では、会社での出来事からコミュニケーション能力を紐解いている。会社員向けに書かれた本だが、フリーランスとして働いている僕は、フリーランスとしては本の内容をどう活かすべきかを考えた。
また、僕はウェブライターをしているので、記事を執筆するにあたりどのように本の内容を活かすかについても触れていく。
本の内容を紹介しつつ、フリーランス目線ではどう本の内容を生かしたら良いのかについて僕の考察を述べていく。
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もくじ
コミュニケーション能力の定義についての補足
この記事におけるコミュニケーション能力とは、相手のことをただひたすら深く知ろうとする姿勢と定義した。が、この定義が間違っていたり、読者の方が納得しなかったりしたら、この先の考察に意味がなくなってしまう。そこで、この定義について補足する。
コミュニケーション能力を高めることを目的としたセミナーや本はたくさんあるが、それらのほとんどはテクニックに関する内容だ。例えば、「相手の話を遮らない」「結論から言う」などである。
会話でのテクニックは確かに重要であるが、それだけでは不十分であるケースもある。先ほど例にあげた「相手の話を遮らない」「結論から言う」の2つで考えてみよう。
相手の話を遮らないと時間の無駄になるケース
相手が気分よく会話ができるようにするためのテクニックとして、相手の話を遮らないことは大切だ。しかし、このテクニックがよくない形で発揮されてしまうと時間が無駄になってしまう。
例えば、会議においてAさんが状況把握が不十分で、間違った前提にそって話始めたとしよう。この場合に、「話を遮るのは失礼だから…」と考えて、Aさんが喋り終わるまで待っていたらどうだろう?
単純に時間が無駄になってしまう。Aさんは会議を良いものにしようとして参加しているのだから、主張が間違っているのであれば早い段階で指摘してあげた方が良いだろう。
もちろん、遮り方によってはAさんの士気を下げてしまうので、注意が必要だ。
結論から言うと相手に嫌われるケース
話を効率よく進める上では、結論を先に話すことはとても重要だ。しかし、これも使う場所を誤ってしまうと、相手に嫌われてしまう可能性がある。
相手に嫌われてしまうかの性が高いのが相談の場面である。Bさんがあなたに相談してきたとしよう。この相談においてBさんは「アドバイスや解決策を求めている」わけではなく、「話を聞いてほしい」「自分の意見を整理したい」と思っていたとする。
この場面において、あなたが「それだったら〇〇○すれば良いよ」などと、解決策や自分の意見の結論を話し始めたらどうだろう?Bさんからすれば、「それは求めてないんだけどな…」と言う感じだろう。
もちろん、その意見や解決策がBさんの役に立つことはあるかもしれない。とは言え、Bさんが求めているコミュニケーションはそこには生まれないのである。
コミュニケーションには姿勢とテクニックの両方が必要
ここまで、コミュニケーション能力の定義「相手のことを深く知る姿勢」とコミュニケーションのテクニックについて述べた。コミュニケーションのテクニックは、私たちのコミュニケーションを円滑にするためにとても役立つが、それだけでは足りないのだと言うことが分かったかと思う。
相手のことを深く知ろうとしていれば、Aさんが会議で間違った発言をしたときにも、会議の時間を有効に使いつつAさんへの気遣いを込めた投げかけができるはずである。
また、Bさんの相談についても同様だ。Bさんの話をとことん聞き、Bさん自身が意見を整理できたタイミングであなたの意見や思い浮かぶ解決策を結論からわかりやすく伝えれば、Bさんにとってとても有意義な相談となるだろう。
コミュニケーションのテクニックは、相手のことを深く知ろうとする姿勢があるからこそ、適切な形で使えるのである。
コミュニケーションの基礎には敬意がある
コミュニケーションには相手を深く知ろうとする姿勢が大事だと述べたが、敬意もコミュニケーションにおいてとても大事なものだと本書に書かれている。
一見良好な関係に見えても、実は上辺だけの付き合いしかないというのはよくあることである。その日の天気や最近のニュースなどの当たり障りのない話題しか話さない、会議でも摩擦が起きないように核心をつくような意見は発言しないなどといった状態だ。
とは言え、上部だけのコミュニケーションしかできない状態では、良い仕事をするのは難しい。では、上辺だけの付き合いと、深いコミュニケーションができる関係の差はどこにあるのか?
本書ではその差は敬意にあるとされている。また、敬意にはどんな性質があるかという点について以下のように述べられている。
- 敬意は好き嫌いといった感情に関係ない
- 敬意があれば自然と配慮のある言葉選びになる
- 敬意があれば激しい議論をしても関係が壊れない
相手の良いところや強みを見つけて敬意を払う。敬意があれば相手の尊厳を守りたくなるため、自然と言葉遣いも相手に不快感のないものになっていく。それがコミュニケーションを円滑にするために必要なことなのだ。
相手と知識の差があるときは伝え方に注意する
コミュニケーションを円滑にするためには、相手に対する敬意が大切だ。しかし、相手と自分との間に知識の差があるときは、敬意を持った上でさらなる注意が必要となる。
知識を持った人が知識があまりない人に教える場面は多い。例えば、医者は診察結果を患者に解説するようにして教えるし、コンサル業はまさに教える行為そのものだし、会社では上司が部下に仕事を教えている。
この時、教える側は伝え方をかなり気を付けないと、相手側は「馬鹿にされている」と感じてしまう。本書では著者が携帯ショップに行った時のエピソードが具体例として語られている。
修理の対応をしてくれるアップルストアにあるGenius barに行くと、「あちらの机の席にかけてお待ちください」と言われた。担当者が来るまで、しばらく時間があったのでまわりの人たちを眺めていると、何やら向かいの席が騒がしい。
見ると、初老の夫婦がアップルのスタッフに対して、声を荒げている。
ついに、初老の男性がキレた。
「なんでおまえはそんなに上から目線なんだ!」と大声で怒鳴る。
引用:『仕事に必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につければいいのか?』安達裕哉著 日本実業出版社
著者もこのやりとりの詳細までは分からなかったようだが、スタッフは丹念に初老の夫婦に説明しようとしていたそうだ。スタッフの態度が悪かったことがイザコザの原因ではない。
初老の夫婦はコンピュータに関してかなり疎く、知識がなかったようで、スタッフの説明がよく理解できなかったのだろう。スタッフが懸命に伝えても、知識の差がありすぎて上から目線のように感じてしまったのだ。
僕自身はこれを読んだ時、「記事を書くときも気をつけなければ」と思った。記事を書くというのは記事を読む人に何かを教えたり解説したりするのとほぼ同じだからだ。
ウェブ上の記事を読む人は、基本的に検索した人が読む。分からなくて知りたいと思っているから記事を読む。ライターは知識があるからこそ記事を書ける。ライターと読者の間には知識の差があるのだ。(今回のような意見を述べるタイプの記事の場合はその限りではない。)
読者が「このライターは上から目線だ」と感じれば記事は読まれないだろう。たとえ、その記事に読者が知りたいことが分かりやすく書かれていたとしてもだ。
読者が知りたいと思っている情報を書くだけでは不十分で、読者が「記事を読もう」とする感情を保つ工夫をしなければいけないのだと、この本に教えられた。
仕事の提案で役立つコミュニケーションのテクニック
その他、僕自身が仕事に役立てられると感じたものを紹介する。紹介するのは、コンペで自分の提案が選ばれる確率を上げる方法だ。
当然だが、コンペでは良い提案が選ばれるが、この「良い提案」というのがなかなか曲者である。本書で明確に書かれているわけではないが、僕自身は「良い提案」を以下のように理解した。
- 提案の内容が良い
- 提案の仕方が良い
多く人は提案の内容にはこだわるが、提案の仕方を気にする人は少数派だろう。コンペで自分の提案が選ばれるためには、提案の内容も大事だが、提案の仕方も大事だというのが本書の主張だ。
良い提案の仕方は、本書に書かれているものをざっくりまとめると以下のようになる。
- 依頼者(顧客)の目的や目的に達成するための具体的目標を伝える
- 自分の提案内容を伝える
提案する際には、どうしても自分の提案内容をすぐに伝えたくなるものだが、ここをグッと堪えるのだ。依頼者が目指したいと思っていることを自分がどう理解しているのかを先に伝える。
こうすることで、依頼主は「この人は自分のことを理解してくれている」と感じ、選ばれる確率が劇的にアップする。
ここでも「相手のことを深く知ろうとする姿勢」が必要になるというわけだ。これさえ押さえておけば良いコミュニケーションをとることが今までよりずっと楽になるだろう。
ライターをしている僕は、この提案の仕方を見て「記事の書き方と一緒だ!」と感じた。ウェブ上の記事を読む読者は、検索して記事にたどり着くため、「知りたいこと」が明確にある。
その知りたいことが書いてある記事でないと、読者は読もうとさえしない。そのため、記事のタイトルや序文(リード文)で「この記事にはこんな内容が書いてあります。」と明記する必要がある。
その際には、「読者がどうしてその内容を知りたいと思っているのか」という心理まで明記できるとさらに良い。読者が「この記事を書いている人は自分の悩みをわかっている!」と感じ、記事を読み進めたくなるからだ。
「あなたのことを理解していますよ」ということを相手に伝えることは、コミュニケーションにおいてとても重要なことなのかもしれない。
まとめ
『仕事で必要な「本当のコミュニケーション能力」はどう身につけたらいいのか?』の内容を考察を加えながら紹介した。本書では、具体的なエピソードからコミュニケーションの本質を掘り下げている。
具体的な場面でどう対処したら良いのかも見えてくるし、著者である安達さんがそのエピソードから学んだことをまとめてくれているので、他の場面で生かせる教訓も得ることができる。
主に仕事におけるコミュニケーション能力について書かれているが、日常生活におけるコミュニケーションにも応用ができるだろう。興味が湧いた人は、ぜひ本書を手にとってみてほしい。
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